季の美(きのび)の誕生物語とネーミング由来

日本初となるジン専門蒸溜所を京都で立ち上げたい、特別なこだわりのクラフトジンを京都の地で京都の人たちと生み出したい。
何か唐長とコラボレーションすることはできないだろうか?と相談を受け、ぼくたちの物語は始まりました。
神は細部に宿ると言いますが、まさに季の美はそのことを体現した 1 本です。
ぼくたちのアトリエに集まった時の光景は今もよく覚えています。ボトルデザインを考えるにあたり、江戸時代から守り伝えた 600 枚以上板木から、創業者であるデービッド・クロール氏、角田紀子・クロール氏、マーチン・ミラー氏たちと共にプロジェクトの象徴的な文様として松竹梅唐草を選びました。松竹梅には、吉祥をもたらし、唐草は成長と繁栄を願う意味があります。松・竹・梅のそれぞれの文様のモチーフの他に、名も無き六弁のモチーフがありました。デービッドさんは、これに反応しました。彼は、このモチーフをジンには欠かせない要素となるジュニパーベリーと思ってもよいですか?と尋ねました。イギリス人に見立ての心や文化がわかるのか⁉と、ぼくはとても興味深く思いました。日本文化には見立てという独特の文化が根付いています。見立てとは、ある物の様子からそれとは別のものの様子を見て取ることであり、和歌や俳句、枯山水などの世界において、価値の転換や創造をもたらすものでもあります。デービッドさんの素晴らしい感性から、六弁モチーフをベリーとして、木の実に見立てて対話したことから、ぼくはインスピレーションを得て、季の美(きのび)という名を思いついたのです。季の美は、木の実、季節の実、季の実(きのみ)という音の響きから転じたものです。実(み)の表記ではそのままで面白くないから、実を美という文字に置き換え、季節の実りの恩恵を表し、めぐるめく四季を愛でること、すなわち、それは、この京都の地で季節の美しさを愛する心、四季の美を愛でる心に繋がるのではと思い、「季の美(きのび)」と、ぼくはノートに書き記しました。この日のこの名が、季の美の商品名となったのです。
季の美のボトルデザインの特筆すべきことは、美しいということです。
単なるデザインではなく、祈りをこめて手がけた手摺りの唐紙から生まれたボトルデザインだということです。人の手の温もり、アナログの手仕事が介在した特別なデザインであり、400 年続く伝統の力と、文様に宿る祈りの力を纏った比類なき美しいボトルであるということです。美しいとは、見た目だけのことではなく、空気です。オリジナルの価値がゆるがないための最後の価値は空気です。それをぼくは、気配と呼んでいます。デザインやテクノロジーはコピーできますが、本物の心や気配は、オリジンに宿ると考えます。
ぼくが思う季の美の美しさは、ブランドフィロソフィーの美しさでもあります。
それぞれの生産者との関わり、素材の吟味、蒸溜所チームの技術と情熱、マーケティングや営業の企画力と行動力。創業者たちの発想と意志から生まれたさまざまな目に見えぬ美の力を纏い、季の美はこの世界に存在しています。
日本において、今をときめくクラフトジンの先駆けとなった季の美ですが、季の美の名に込めた意味のみならず、KI-NO-BI という音の響きも含め、この商品とブランドが飛躍する上で大切な一因となり物語を紡いでいるのでは、と自負しています。
ぼくは、この物語が、季の美とともに世界を駆け巡り愛されることを願っています。
千田長右衛門
