
文様を重ね、メッセージからポエジーへ
トトアキヒコは、文様がもともと持っていた力を解き放ち、あらたなメッセージを生み出す試みにも取り組んでいます。
「例えば、流水は流水、星は星だし、龍は龍の文様として伝えてきたのが従来の唐紙ですが、ぼくの場合は、水面に星を写し、そこに龍を描いて 《星に願いを》という作品になります。渦の唐紙は、その規則性に変化を与え、エネルギーを象徴する渦をランダムに配してうねりを与え、その不揃いな絵の具の表情が特徴となります。意図しないことを意図する、無我の境地から生まれることを願った唐紙は、水の神さまと共に手がけたと考えて、 水の神様、ミズハノメから《ミズハ》と名付けました。抽象でも具象でもない文様を重ねて意味と意味を結んでゆき、物語を生み出すことによって、 唐紙にポエジー、詩情を与えたかった。心象風景を唐紙に写すことは、前人未到の試みとなりました」。
出典:トトアキヒコ・千田愛子『人生を彩る文様』
(講談社、2020年、17ページ)